【おことわり】当記事では文章の簡略化の為、福岡〜延岡・宮崎線の夜行バスを「宮崎夜行」、福岡〜鹿児島線の夜行バスを「桜島夜行」と表記させて頂きます。また、福岡〜宮崎線「フェニックス号」と福岡〜鹿児島線の昼行の「桜島号」については廃止とは関係ありません。何卒ご了承ください。また、記事内のすべての写真は2019年8月に撮影したものです。
突然の廃止発表を受けて
「宮崎夜行」福岡〜延岡・宮崎間
「桜島夜行」福岡〜鹿児島間
上記の2路線は九州島内完結の夜行高速バスとして長年活躍してきました。狭い九州とは言えども距離にして300km前後を夜通し走るということから、夜間・早朝帯にバス停を利用する人々の注目の的でありました。
しかし、2020年に入り世界中に被害を及ぼしている新型コロナウイルスの影響で「宮崎夜行」は4月3日以降、「桜島夜行」は4月21日からそれぞれ5月31日までの間運休となっていました。
2020年4月28日に西日本鉄道は「宮崎夜行」と「桜島夜行」の運行を5月31日をもって終了すると発表しました。元々5月末までの運休が発表されていたことから、結局運行を再開することなく廃止を迎えることとなってしまいました。
廃止の理由については「利用率の伸び悩み」「収益改善が見込めない」「労働力の確保が困難である」等が挙げられており、これまでも様々な難局を乗り越えてきた運行会社側としては苦渋の決断だったかと思います。
本記事では、2019年8月に私Mokutanが福岡〜延岡・宮崎線「宮崎夜行」に乗車した際の乗車記を紹介しています。
拙い記事かもしれませんが、私の乗車体験を共有し、惜しくも乗り納め・見納めできなかった方々の助けに少しでもなればいいな、と思って投稿させていただきました。
九州夜行バスの歴史を振り返る
「宮崎夜行」の歴史
「フェニックス号」の夜行便として1991年8月1日に運行を開始(1日1往復)し、2004年4月1日以降は北九州発着に延長された他、停車駅の変更などの試行錯誤を繰り返すも2009年9月1日をもって運行休止となりました(土休日上限 1000円制度等の高速道路施策の影響)。
一旦は事実上の廃止までに追い込まれたものの、JR九州の「ドリームにちりん」の廃止をきっかけに2011年3月12日から夜行便の運行を再開しました(当時は6ヶ月間程度の試行運行の予定だった)。再開の1ヶ月後に福岡空港発着に延長されましたが、2012年5月6日をもって毎日運行の終了(金・土曜と特別休暇期間のみに変更)を経て、2013年3月31日を最後に二度目の運行終了を迎えました。
2016年4月22日に福岡〜延岡・宮崎線「宮崎夜行」の運行を開始※し、福岡〜宮崎間の夜行バスは事実上二度目の復活となりました(金・土・日・祝前日・祝日に運行)。2017年3月31日に宮崎交通が参入して共同運行便となり現在の形(金・土のみの運行)に落ち着いたものの、三度目の廃止を迎える形となってしまいました。

「桜島夜行」の歴史
1990年3月22日に「桜島号」の運行開始と同時に夜行便(1日1往復)の運行を開始しました。停車駅や運行会社の変更はあったものの、1日1往復の運行を30年にわたって維持し続けました。2016年の熊本地震の際は福岡〜鹿児島間の高速バスで最も早く運行を再開(発生から6日後)するなど、「桜島号」の中でも象徴的な運用でありましたが、今回の突然の廃止を迎えることになりました。
宮崎夜行の運行会社別徹底比較
少し重めの入りとはなりましたが、ここからは「宮崎夜行」の車内設備や運行経路等について改めてご紹介していきたいと思います。今回はこれまでの高速バスレビューとは異なり、西日本鉄道便と宮崎交通便の両方に乗車する機会がありましたので、両社間での座席等を比較していきたいと思います。また、記事の最後でJR九州が運行していた「ドリームにちりん」についても触れようと思います。
基本情報

乗車日時:2019年8月中旬
乗車区間:宮崎駅 → 西鉄天神高速バスターミナル
所要時間:約8時間30分前後
運行会社:西日本鉄道・宮崎交通 (1往復/日)
停留所について
延岡・宮崎方面行き
西鉄天神高速バスターミナル(乗), 博多バスターミナル(乗), 高速基山(乗), 延岡駅(降), 日向IC(降), 佐土原駅前(降), 宮崎駅(降), 宮交シティ(降)
※ 乗車専用は(乗)、降車専用は(降)として表記
主要バス停間の所要時間目安
西鉄天神高速バスターミナル | 15分 | 博多バスターミナル |
博多バスターミナル | 35分 | 高速基山 |
高速基山 | 5時間25分 (休憩を含む)※1 | 延岡駅 |
延岡駅 | 1時間40分 (休憩を含む)※2 | 佐土原駅前 |
佐土原駅前 | 25分 | 宮崎駅 |
宮崎駅 | 10分 | 宮交シティ |
西鉄天神高速バスターミナル | 約8時間20分 | 宮崎駅 |
西鉄天神高速バスターミナル | 約8時間30分 | 宮交シティ |
博多バスターミナル | 約8時間05分 | 宮崎駅 |
博多バスターミナル | 約8時間15分 | 宮交シティ |
※ 赤背景同士、青背景同士は相互利用不可 ※1 山田SAで休憩停車(15分) ※2 川南PAで休憩停車(15分)
福岡方面行き
宮交シティ(乗), 宮崎駅(乗), 佐土原駅前(乗), 日向IC(乗), 延岡駅(乗), 高速基山(降), 福岡空港国際線(降)※1, 博多バスターミナル(降), 西鉄天神高速バスターミナル(降)
※ 乗車専用は(乗)、降車専用は(降)として表記 ※1福岡方面行きのみ停車
主要バス停間の所要時間目安
宮交シティ | 10分 | 宮崎駅 |
宮崎駅 | 30分 | 佐土原駅前 |
佐土原駅前 | 1時間40分※1 | 延岡駅 |
延岡駅 | 5時間25分 (休憩を含む)※2 | 高速基山 |
高速基山 | 25分 | 福岡空港国際線 |
福岡空港国際線 | 15分 | 博多バスターミナル |
博多バスターミナル | 10分 | 西鉄天神高速バスターミナル |
宮交シティ | 約8時間25分 | 博多バスターミナル |
宮交シティ | 約8時間35分 | 西鉄天神高速バスターミナル |
宮崎駅 | 約8時間15分 | 博多バスターミナル |
宮崎駅 | 約8時間25分 | 西鉄天神高速バスターミナル |
※ 赤背景同士、青背景同士は相互利用不可 ※1 川南PAで休憩停車(15分) ※2 山田SAで休憩停車(15分)
時刻表 (2020年4月1日改正)
延岡・宮崎方面
西鉄天神高速バスターミナル | 博多バスターミナル | 高速基山 | 延岡駅 | 日向IC | 佐土原駅前 | 宮崎駅 | 宮交シティ |
---|---|---|---|---|---|---|---|
23:00 | 23:15 | 23:48 | 5:17 | 5:52 | 6:56 | 7:23 | 7:33 |
※ 赤背景同士、青背景同士は相互利用不可
福岡方面
宮交シティ | 宮崎駅 | 佐土原駅前 | 日向IC | 延岡駅 | 高速基山 | 福岡空港国際線 | 博多バスターミナル | 西鉄天神高速バスターミナル |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
22:20 | 22:31 | 22:58 | 0:07 | 0:42 | 6:05 | 6:29 | 6:44 | 6:54 |
※ 赤背景同士、青背景同士は相互利用不可
車内設備について
- スーパーハイデッカー仕様
- 3列独立座席(リクライニングシート)
- レッグレスト・フットレスト完備
- ブランケットとスリッパの備え付けあり
- フリーWi-Fi完備
- 座席コンセントは各座席に完備
- 荷物は乗車前に預ける他に、網棚にも置くことができる。
- 全席の肘掛下部にペットボトルホルダー有り
- 全ての車両が化粧室完備(車内中間部の階段下)


休憩について
福岡〜宮崎間は夜行高速バスの為もちろん車内にトイレは用意されていますが、休憩は山田SAと川南PAでの2回(各15分)設けられています。時間帯で言えば深夜帯と早朝に分けられています。休憩以外でも停車する場合がありますが、乗務員の仮眠休憩の為の停車となっておりドアは開きません。車外での休息は上記の場所に限られていることを心に留めておく必要があります。
ドリームにちりん(参考)
JR九州は2011年3月10日まで「宮崎夜行」に近いルートで特急列車「ドリームにちりん」を運行していました。
「ドリームにちりん」は博多〜宮崎空港間で毎日1往復設定され、博多, 小倉, 中津, 別府, 大分, 佐伯, 延岡, 日向市, 佐土原, 宮崎, 南宮崎, 宮崎空港など日豊本線経由の特急に準じた停車駅となっていました(停車駅一部省略有り。太字は「宮崎夜行」と重なる駅)。
料金は昼行の特急列車と同額でありながら、グリーン車ではブランケットの用意があったなど高速バスとは違った魅力がありました。
ドリームにちりんと夜行バスの比較(博多〜宮崎間)
比較対象 | 宮崎夜行 | 結果 | ドリームにちりん |
---|---|---|---|
所要時間 | 約8時間05分(下り) | JR特急が速い! | 約7時間30分(下り) |
運行本数 | 1日1往復 | 両者ほぼ差なし | 1日1往復 |
正規運賃※1 | 6760円 | 夜行バスが安い! | 9050円(自由席) |
学生割引※1 | —(※2なし)— | 夜行バスが安い! | 8010円(自由席) |
往復割引※1 | 12460円 | JR特急が安い! | 11520円(指定席) |
※「ドリームにちりん」の所要時間は2011年3月時点の数値で比較
※1 運賃は2020年4月現在の数値での比較
※2 運賃設定がない為正規運賃と同額として表記
まとめ
夜行バスは価格面において若干有利であったものの、所要時間や近年の運行本数を考えるとJRに及ばない部分もあったというのが正直な結論です。しかし、サービス面ではJRに劣らない実力があったことは確かです。
労働環境の改善を求める声や時代の流れ等の事情をよく考えた上での決断とはなりましたが、価値が見直されていつかまた復活を果たすことを祈るばかりです。